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2008.10.22 (Wed)

詩人の恋作品48(全曲)/R.シューマン テノール/辰巳直弘

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ぼくが素人ながらにシューマンの詩人の恋に挑戦した訳は、たった一つ。
この中に人間の様々な苦悩を浄化して葬り去る鍵が用意されていると感じたから。

そうは言ってもぼくは人よりほんの少し歌とピアノが得意なだけで、この作品が持つ本来の魅力を伝えることは到底できないと思うし、ハイネが、そしてシューマンが描いた世界とその真意には遠く及ばないと思う。
けれどもこの作品の中に流れる「苦しみの昇華」という哲学が、今悩んだり苦しんでいる人にほんのちょこっとでも伝われば嬉しいし、これをきっかけに、名盤と言われてるヴンダーリッヒやディスカウの録音の手にとって、本当の詩人の恋の魅力ってものを感じてもらえれば幸せです。



詩人の恋 作品48(全曲)/R.シューマン
Dichterliebe op.48/R.Schumann
テノール・ピアノ伴奏/辰巳直弘

全曲試聴する(30'47)


ハインリヒ・ハイネ(Christian Johann Heinrich Heine 1797-1856)の詩による歌曲集。1840年、シューマン30歳の時に作曲された。
この年は俗に「歌の年」と呼ばれ、詩人の恋を含めおよそ130曲あまりの歌曲が作曲された。
彼の代表的な歌曲集「リーダークライス」「ミルテの花」「女の愛と生涯」などもこの年に成立している。

この時期のシューマンは、後に妻となるクララ・ヴィークと大恋愛中であったが、クララの父であり自らのピアノの恩師でもあるフリードリッヒ・ヴィークは、すでに一流ピアニストであった娘クララと、当時まだ認められていなかった青年作曲家との結婚を認めようとはせず、様々な妨害工作を行っていた。
フリードリッヒの妨害は熾烈を極め、クララとシューマンが会えないよう娘を強引に演奏旅行に出したり、シューマンを支援する関係者に誹謗中傷の手紙を送ったりしていた。
そうした心労もありシューマンは幾度となく精神的不安定に陥るが、幸いなことに創作意欲だけは失われることがなく次々と作品を生み出し、この詩人の恋が書かれることとなった。

当初は「ハイネの詩【歌の本】の抒情間奏曲からの二十の歌曲」として友人でもあり僚友でもあったメンデルゾーンに献呈される予定であったが、刊行は4年後の1844年に持ち越され、前半の2曲「あなたの顔は」「頬に頬」、後半の2曲「ぼくの恋は輝き」「ぼくの馬車はゆっくりと」の計4曲が外され「詩人の恋」を題されて、歌手シュレーダー・デフリーントに献呈された。

なお詩人の恋は歌曲集ではあるが、シューベルトの「美しき水車小屋の娘」や「冬の旅」に見られるような連続した物語性はなく、点描的に主人公である詩人の恋を描いている。
しかしながら優れた文学者の息子であり、自らも音楽家になるか文学者になるかと悩んだシューマンらしい巧みな楽曲配置により、主人公の心情の移り変わりが、詩のアイロニーと共に美しく表現されており、内面的、精神的な面では見事なつながりを持っている。

曲全体の大きな流れは、恋の芽生えから破綻、そして愛との決別と苦しみの昇華に向かうものであり第1曲~3曲までが恋の喜びを、4~5曲目にその喜びが除々に内省的になっていき、6曲目にして破滅の不安と暗示を、7曲目に確定的な失恋に至った後は一気に痛烈な苦しみと怒りの吐露へと変化する。
12曲に至って主人公の苦しみは今度は昇華への道を歩み始め、終曲において愛の埋葬、過去との決別を示し、長い後奏の中で詩人の苦しみや過去は昇華を遂げる。




1.Im wundershönen Monat Mai
~美しく麗しい五月に~(この曲だけ試聴する)


ドイツの春の訪れは五月。花のつぼみが芽吹くように、ぼくの心の中にも恋が芽生えたと歌う。
曲はイ長調であるが、冒頭より嬰ヘ短調の不安定な和音で始められる。
恋の芽生えと同時に生じた主人公の不安、そしてその行く末を暗示しているかのようなシューマン独特の色彩豊かな手法である。

Im wundershönen Monat Mai 美しく麗しい五月に
Als alle Knospen sprangen, 花のつぼみがみんな芽吹き始めると
Da ist meinem Herzen ぼくの心の中にも
Die Liebe aufgegangen. 恋が咲き出てきたんだ

Im wundershönen Monat Mai ~美しく麗しい五月に~
Ale alle Vögel sangen, 鳥たちがみんな歌い始めると
Da hab' ich ihr gestanden ぼくもあの人に打ち明けたんだ
Mein Sehnen und Verlangen. ぼくの心のひそやかな想いを


2.Aus meinen Tränen sprießen
~ぼくの涙は溢れ出て~(この曲だけ試聴する)


恋する自分をナイチンゲールに例えて歌う、若者の内省的な想いが現れる曲。

Aus meinen Tränen sprießen ぼくの涙は溢れ出て
Viel blühende Blumen hervor, たくさんのあでやかな花となるんだ
Und meinen Seufzer werden ぼくのつくため息は
Ein Nachtigallenchor. ナイチンゲールの歌声になるんだ

Und wenn du mich lieb hast,Kindchen, かわいい君よ、君がぼくを愛してくれるなら
Schenk'ich dir die Blumen all', 君にこの花を全部あげるよ
Und vor deinem Fenster soll klingen そして君の窓辺には
Das Lied der Nachtigall. ナイチンゲールの歌声を響かせてあげる


3.Die Rose, die Lielie, die Taube, die Sonne
~ばらや、百合や、鳩や、太陽~(この曲だけ試聴する)


わずか22小節、30秒程度の短いスケルツォの中に、愛らしさが生き生きと表現されている。

Die Rose, die Lielie, die Taube, die Sonne, バラや百合や鳩や太陽
Die liebt'ich einst alle in Liebeswonne, ぼくはずっとそれらが大好きだったんだ
Ich lieb' sie nicht mehr, ich liebe alleine でも今はもうそういうものじゃなくて、たった一人
Die Kleine, die Feine, die Reine, die Eine, 愛らしくて、美しくて、清らかな人だけが好きなんだ
Sie selber, aller Liebe Wonne, その人だけが愛の喜びすべて
Ist Rose und Lilie und Taube und Sonne, ぼくのバラ、ぼくの百合、ぼくの鳩、ぼくの太陽なんだ
Ich Liebe alleine die Kleine, die Feine, die Reine, die Eine.
たった一人、愛らしくて、美しくて、清らかな人だけが好きなんだ


4.Wenn ich in deinen Augen seh'
~ぼくが君の瞳を見つめると~(この曲だけ試聴する)


ト長調というきらびやかな調性の中にありながらも、愛していると言われると涙が溢れ出すという表現に見られるように、若者の恋は少しずつ内向的化していく。

Wenn ich in deinen Augen seh' 君の瞳を見つめると
So schwundet all' mein Leid unf Weh, ぼくは悲しみも苦しみもみんな消えてしまうんだ
Doch wenn ich küsse deinen Mund, そして君にキスをすると
So werd' ich ganz und gar gesund. ぼくはすっかり元気になれるんだ

Wenn ich mich lehn' an deinen Brust, 君の胸にもたれかかると
Kommt's übwr mich wie Himmelslust, まるで天国の喜びに抱かれたようになるんだ
Doch wenn du sprichst: Ich liebe dich! でも、きみに「愛してるよ」って言われると
So muß ich weinen bitterlich. はげしく涙が溢れ出てしまうんだ


5.Ich will meine Seele tauchen
~ぼくの心をひそめてみたい~(この曲だけ試聴する)


5曲目にして初めてはっきりとした短調で奏されることや、百合の花の中にひそむという表現から見られるように、若者の恋は明確に内省化し同時に恋の破滅を暗示させる。

Ich will meine Seele tauchen, ぼくの心をひそめてみたいんだ
In den Kelch der Lilie hinein, 百合の花の中に
Die Lilie soll klingend hauchen そして百合に芳しく歌い出させよう
Ein Lied von der Liebsten mein. ぼくの愛する人をほめたたえる歌を

Das Lied soll schauern und beben, その歌は心ときめくものにしたい
Wie der Kuß von ihrem Mund, ちょうど愛する人がぼくの口元に
Den sie mir einst gegeben そっとキスしてくれたように
In wunderbar süßer Stund'. あの甘い夢のようなひとときのように


6.Im Rhein, im heiligen Strome
~ライン川の聖なる流れの中に~(この曲だけ試聴する)


ライン河畔の大聖堂の中にあるマリア像に恋人の面影を重ね合わせその美しさを讃えるが、時折響く不安定な和音が示すように、若者の心は意識と無意識に分裂していく。
後奏に入ると今度は明確に意識が沈降していき、それに伴い左手のオクターブがひたすらに下降を見せて終始する。
この曲の最終音であるホ短調のフォルテの終始が、ある意味若者の恋の破滅を決定付けるといっても過言ではないないだろう。

Im Rhein, im heiligen Strome, ライン川の聖なる流れの
Da spiegelt sich in den Well'n うねる波間に映り込んでいるのは
Mit seinem großen Dome, ケルンの大聖堂と
Das großse, heiligen Köln. 聖なる都市ケルンだ

Im Dom da steht ein Bildnis, 聖堂の中には肖像画があって
Auf goldenem Leder gemalt; それは金箔に彩られた羊皮紙に描かれている
In meines Lebens Wildnis その絵姿はぼくの荒れ果てた人生の迷路を
Hat's freundlich hineingestralt. やさしく照らしてくれた

Es schweben Blumen und Eng'lein その絵はぼくの愛するマリア像だ
Um unsre liebe Frau, それは花々や天使に囲まれている
Die Augen, die Lippen, die Wänglein, 彼女の瞳、唇、頬は
Die gleichen der Liebstein genau. 間違いなくぼくの愛する人のものだ


7.Ich grolle nicht
~ぼくは恨まない~(この曲だけ試聴する)


全16曲の中で若者の心情が明確に転換するキーポイントとなる曲。
自分の裏切った恋人に対する怒りが露になり、意識の中ではそれを赦し受け入れようとするものの、無意識の中では激しい慟哭として終始伴奏の上に紡ぎ出される。

Ich grolle nicht, ぼくは恨まない
Und wenn das Herz auch bricht, たとえこの心が張り裂けようとも
Ewig verlor'nes Lieb!  永遠にぼくのもとを離れてしまった人よ!
Ich grolle nicht. ぼくは恨まない
Wie du auch strahlst in Diamantenpracht, たとえ君があまたの宝石でその身を飾ろうとも
Es fällt kein Strahl in deines Herzens Nacht. きみの心の闇にいかなる光も射し込みはしないだろう
Das weiß ich längst. それは分かっていたことだけど

Ich grolle nicht, ぼくは恨まない
Und we das Herz auch bricht, たとえこの心が張り裂けようとも
Ich sah dich ja im Traume, ぼくは夢で君をみたんだ
Und sah sie Nacht in deines Herzens Raume, 君の心の中にひそむ闇を見たんだ
Und sah die Schlang', die dir am Herzen frißt, 君の心に巣食う大蛇を見たんだ
Ich sah, mein Lieb, wie sehr,du,elend bist. そしてぼくは見たんだ、君の惨めな姿を
Ich grolle nicht. ぼくは恨まない


8.Und wüßten's die Blumen, die kleinen
~花が、小さな花が分かってくれるなら~(この曲だけ試聴する)


前曲により若者の心情は決定的に沈降への道をたどり、ここから3曲続けて短調の曲となる。
悲劇的な事実を目の当たりにして、それを花やナイチンゲールや星に語りかけ自らを浄化しようとするものの、まだ意識の中ではそれを受け入れられずに、後奏に入り激しい怒りと絶望として噴出する。

Und wüßten's die Blumen, die kleinen, 花が、小さな花が分かってくれるなら
Wie tief verwundet mein Herz, このぼくがどんなに深く傷ついているかを
Sie würden mit mir weinen, そうすれば花はぼくのために泣いてくれるだろう
Zu heilen meinen Schmerz. そしてぼくの悲しみを癒してくれるのに

Und wüßten's Nachtigallen, ナイチンゲールが分かってくれるなら
Wie ich so traurig und krank, ぼくがどんなに悲しみと苦しみに沈んでいるかを
Sie ließen fröhlich ershallen そうすればナイチンゲールは歌ってくれるだろう
Erquickenden Gesang. ぼくの心を元気付けてくれる愉快な歌を

Und wüßten's sie mein Wehe, そしてぼくの苦しみを分かってくれたなら
Die goldenen Sternelein, 金色に輝く小さな星たちよ
Sie kämen aus ihrer Höhe, その高い空から降りてきて
Und sprächen Trost mir ein. ぼくに慰めの言葉をかけてくれるのに

Sie alle können's nicht wissen, でもみんな何も知らないんだ
Nur eine kennt meinen Schmerz; ただ一人の人がぼくの苦しみを知っているんだ
Sie hat ja selbst zerrissen, だってその人が、その人こそが
Zerrissen mir das Herz. ぼくの心をずたずたに引き裂いたんだから


9.Das ist ein Flöten und Geigen
~あれはフルートとヴァイオリンの響きだ~(この曲だけ試聴する)


かつて愛した人が他の男と結婚式を挙げている。
軽やかな宴のダンスを模してのワルツであるが、若者の心情は絶望に満ち曲は短調で流れる。
突如転調し明るく騒がしくなったりと、結婚式の喧騒の中での不条理な若者の悲しみが絶妙に描写されている。

Das ist ein Flöten und Geigen, あれはフルートとヴァイオリンの響きだ
Trompeten schmettern darein; トランペットも時折聞こえてくる
Da tanzt wohl den Hochzeitsreigen あそこでいとしいあの人が
Die Herzallerliebste mein. 婚礼の舞を踊っているんだ

Das ist ein Klingen und Dröhnen, あれはクラリネットの甲高い音と
Ein Pauken und ein Schalmei'n; ティンパニーの低いうなりだ
Dazwichen schulchzen und stöhnen その中ですすり、咽び泣いている
Die lieblichen Engelein. 愛らしい天使たちが


10.Hör'ich das Liedchen klingen
~かつて愛する人が歌ってくれた~(この曲だけ試聴する)


この上なく繊細なト短調の上に、若者の涙の象徴であろうか、涙の雫のような音型が滴り落ちる。
悲しみはすでに激しさから静けさへと転じ、昔の恋の面影をただ一人無心に見つめるかのような珠玉の美しさを持つ。
全16曲の中で、主人公の悲しみの代名詞ともなる曲。

Hör'ich das Liedchen klingen, 昔、愛する君が歌ってくれた
Das einst die Liebste sang, あの歌が聞こえてくると
So will mir die Brust zerspringen 言いようのない悲しみがやってきて
Von wildem Schmerzendrang. ぼくの胸は張り裂けそうになるんだ

Es treibt mich ein dunkles Sehnen 真っ暗な想いに誘われて
Hinauf zur Waldeshöh', 森の奥深くの丘に登ろう
Dort löst sich auf in Tränen そこでただひたすらに泣いたなら
Mein übergroßes Weh'. ぼくの無限の悲しみは解き放たれるのに


11.Ein jüngling liebt ein Mädchen
~ある若者がある娘に恋をした~(この曲だけ試聴する)


若者の悲しみは自虐的な道へと入り込む。
曲調は明るい変ホ長調であるが、そこには自身に対する嘲笑的な意味が読み取れ、この曲の中での出来事は明らかに自分自身を指している。

Ein jüngling liebt ein Mädchen, ある若者がある娘に恋をした
Die hat einen andern erwählt; でもその娘は別の男が好きになった
Der andre liebt eine andre, けれど娘に好かれた男は別の娘に恋をして
Und hat sich mit diser vermählt. その娘と結婚してしまった

Das Mädchen nimmt aus Ärger 娘はやけになってしまって
Den ersten besten Mann, たまたま最初に目にとまった
Der ihr in den Weg gelaufen; ゆきずりの男に身を任せてしまった
Der Jüngling ist übel dran. 最初の若者は目も当てられぬ始末

Es ist eine alte Geschichte, これは昔の話ではあるけれど
Doch bleibt sie immer neu; いつの時代にもよくある話だ
Und wem sie just passieret, こんなことがわが身に降りかかれば
Dem bricht das Herz entzwei. 心は張り裂けてしまう


12.Am leuchtenden Sommermorgen
~まばゆくきらめく夏の朝に~(この曲だけ試聴する)


ここへきて主人公の心情は、意識から無意識へと一気に相転移を遂げる。
悲しみや苦しみとはまったく別の次元でさまよい歩き、もやは人としての感情ではなく、ここで歌われる花と同化しているかのようである。
詩人の恋を、人間の苦悩の昇華になぞらえるなら、全16曲の中でもっとも重要となる曲のひとつである。

Am leuchtenden Sommermorgen まばゆくきらめく夏の朝に
Geh'ich im Garten herum. ぼくは庭をさまよい歩く
Es flüstern und im sprechen die Blumen 花たちはささやきかけるが
Ich aber wandle stumm. ぼくは黙って歩き続ける

Es flüstern und sprechen die Blumen, それでも花たちはささやき語りかける
Und schaun mitleidig mich an: そして哀れみに満ちた目でぼくを見上げこう言う
Sei unsrer Schwester nicht böse, ~私たちの妹を悪く思わないでね
Du trauriger, blasser Mann. 悲しみにさまようあなたさまよ~


13.Ich hab' im Traum geweinet
~ぼくは夢の中で泣き濡れた~(この曲だけ試聴する)


主人公の中にわずかに残った最後の意識、現実の中で夢を見て激しく咽び泣く。
途切れ途切れになる意識を表すかのように、きわめて散発的な伴奏によってレチタティーヴォを思わせる。
もっとも重苦しい調のひとつである変ホ短調で書かれていること、13曲目に置かれたことなどを見ても、シューマンの性格から見れば明らかにここに現実の苦しみという意識の終焉を置いているように思われる。
この後、主人公はいよいよもって苦悩の昇華、精神の浄化へと向かう。

Ich hab' im Traum geweinet, ぼくは夢の中で泣き濡れた
Mir träumte, du längest im Grab. 君がお墓の中にいる夢だったから
Ich wachte auf, und die Träne 目を覚ましてももまだ涙が
Floß noch von der Wange herab. 頬を伝って流れていたんだ

Ich hab' im Traum geweinet, ぼくは夢の中で泣き濡れた
Mir träumt', du verließest mich. 君がぼくのもとを去っていく夢だったから
Ich wachte auf, und ich weinte 目を覚ましてからもずっといつまでも
Noch lange bitterlich. ぼくは激しくむせび泣いていたんだ

Ich hab' im Traum geweinet, ぼくは夢の中で泣き濡れた
Mir träumte, du wär'st mir noch gut. 夢の中で君にさやしくされたから
Ich wachte auf, und noch immer 目が覚めるとさらに激しく
Strömt meine Tränenflut. ぼくは涙を流し続けたんだ


14.Allnächlich im Traume seh' ich dich
~ぼくは毎晩君を夢に見る~(この曲だけ試聴する)


前曲がもっとも暗い調のひとつであるのに対し、この曲はロ長調というもっとも明るく輝かしい調で歌われる。
調号にしてフラット6つからシャープ5つへという劇的な転換は、主人公の心情が過去の苦しみと決別し着実に昇華へと方向を変えたことを感じさせる。

Allnächlich im Traume seh' ich dich, ぼくは毎晩君を夢に見る
Und sehe dich freundlich grüßen, 君はそこで優しくぼくに挨拶をしてくれるんだ
Und laut aufweinend stürz ich mich するとぼくは声をあげて泣き出して
Zu deinen süßen Füßen. 君の甘い足元に身を投げ出すんだ

Du siehest mich an wehmütiglich 君は哀れみに満ちた目でぼくを見つめ
Und schüttelst das blonde Köpfchen; ブロンドの頭を横に振るんだ
Aus deinen Augen schleichen sich そして君の瞳から零れ落ちるんだ
Die Perlentränentröpfchen. 真珠のような涙粒が

Das sagt mir heimlich ein leises Wort きみはぼくにそっとささやきかける
Und gibst mir den Strauß von Cypressen. それから糸杉の花冠をぼくにくれるんだ
Ich wachte auf, und der Strauß ist fort, けれど夢から醒めるとそれは幻となって
Und's Wort hab' ich vergessen. 君の言葉も消えてしまうんだ


15.Aus alten Märchen winkt es
~昔々の童話の中から~(この曲だけ試聴する)


いにしえの童話、魔法の国、至福の国という空想の世界の中で、主人公の心情は現実を離れ美しく力強く昇華を遂げていく。
同じ音型を取りながら除々に調性そのものが登り詰めていく様子は、第6曲で見られた意識の沈降とまったく対照的でシューマン独特の文学的な形式美を思わせる。
曲の最後にはそれらの夢が泡と消えると歌うが、そこにはもはや絶望や悲しみを超越した高みからの言葉にすら感じる。

Aus alten Märchen winkt es, 昔々の童話の中から
Hervor mit weißer Hand, 白い手が手招きし
Da singt es und da klingt es 魔法の国の中から
Von einem Zauberland; 歌声が響き渡る

Wo bunte Blumen blühen そこでは色とりどりの花が
Im gold'nen Abendlicht, 金色に輝く夕日に映えて
Und lieblich dufftend glühen, 花嫁の表情みたいに
Mit bräutilichem Gesicht. 花々は芳しい香りを放っている

Und grüne Bäume singen 緑に映える木々も
Uralte Melodei'n, いにしえのメロディーを歌い
Die Lüfte heimlich klingen, そよ風がさっと吹き抜ければ
Und Vögel schmettern drein; 小鳥たちは歌いさんざめくんだ

Und Nebelbilder steigen 霧がゆらめきながら
Wohl aus der Erd' hervor, 大地から立ち上って
Und tanzen luft'gen Reigen 不思議な調べにのって
Im wunderlichen Chor; つむじ風が歌い踊っている

Und blaue Funken brennen 木の葉っぱからも幹からも
An jedem Blatt und Reis, 青い花火が散っていて
Und rote Lichter rennen 赤い光も入り混じって
Im irren, wirren Kreis; ぐるぐる駆け回っている

Und laute Quellen brechen 自然の岩の間から
Aus wildem Marmorstein, 噴水が甲高い音と共に吹き上がって
Und seltsam in den Bächen 小川にその影を映しながら
Strahlt fort der Widerschein. 不思議な光を放ち続けているんだ

Ach, könnt' ich dorthin kommen, ああ、魔法の国に入れれば
Und dort mein Herz erfreu'n, ぼくの心はさわやかに洗われて
Und aller Qual entnommen, すべての苦しみから解き放たれ
Und frei und selig sein! 自由で幸せになれるのに!

Ach! Jenes Land der Wonne, ああ、その至福の楽園ならば
Das seh' ich oft im Traum, ぼくは夢の中でよく見ているよ
Doch kommt sie Morgensonne, けれど朝になって太陽が昇ると
Zerfließt's wie eitel Schaum. 泡のようにはかなく消えてなくなってしまうんだ


16.Die alten bösen Lider
~昔の忌まわしい歌を~(この曲だけ試聴する)


14曲~15曲目で苦悩の昇華へと向かった若者の心は、終曲においてひとつの結論へと至る。
それはすなわち愛の埋葬、過去との決別である。
冒頭に響き渡るフォルティッシモの和音を合図に、葬送の行列を思わせるかのようなオスティナート(反復音型)が示され、自身の愛を棺桶に入れて海の底深くに沈めようと歌う。
後奏において第12曲の美しいテーマが回想され、沈みゆく愛の棺と対照的に若者の苦しみは天に昇るかのように肉体を離れ、ここに昇華を遂げる。

Die alten bösen Lider, 昔の忌まわしい歌を
Die Träume bös' und arg, 忌まわしい夢を
Die laßt uns jetzt begraben, 今こそ葬り去ってしまおう
Holt einen großen Sarg. 大きな棺を持ってくるんだ

Hinein leg' ich gar manches 中にはいろいろなものを入れるけど
Doch sag' ich noch nicht, was; 今はまだ言わないでおくよ
Der Sarg muß sein noch größer その棺はハイデルベルグの樽よりも
Wie's Heidelberger Faß. もっと大きなものでないとだめだ

Und holt eine Totenbahre 次に棺を乗せる台を持ってくるんだ
Und Bretter fest und dick; それから丈夫で分厚い蓋も
Auch muß sie sein noch länger, それらはマインツの橋よりも
Als wie zu Mainz die Brück', もっと長くなければだめだ

Und holt mir auch zwölf Riesen, さて次に12人の巨人を連れてくるんだ
Die müssen noch stärker sein それはライン河畔のケルン大聖堂の
Als wie der starke Christoph 力持ちのクリストフよりも
Im Dom zu Köln am Rhein. もっと力持ちでなければだめだ

Die sollen den Sarg forttragen, 彼らに棺をかつがせて
Und senken ins Merr hinab; 海の中に沈めに行かせよう
Denn solchem großen Sarge だってこんな大きな棺には
Gebürhrt ein großes Grab. 海のような大きな墓場しか似合わないから

Wißt ihr, warum der Sarg wohl わかるかい、君たち。
So groß und schwer mag sein? 棺がどうしてそんなに大きくて重いのかが?

Ich senkt auch meine Liebe それはぼくがその中にぼくの愛や苦しみを
Und meinen Schmerz hinein. 全部葬り去ったからなのさ

                         対訳・楽曲解説/辰巳直弘

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