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2006.10.09 (Mon)

靖国問題

安倍首相の初の大仕事、日中首脳会談が行われましたね。
内容はもちろん北朝鮮の核実験問題と靖国問題が中心。

北朝鮮の核実験問題は日中のみならず、世界各国も憂慮の念を抱いているから双方の言い分は一致するけれど、やっかいなのは、やはり靖国問題。
ちょうどいい機会だから、僕なりにもう一度整理して考えてみたい。

靖国神社。東京千代田区にある神社で、近代以降の日本が関係した国内外の事変・戦争において、日本のために為に命を捧げた戦没者が祀られている。
具体的に言うと、黒船来航以後に、国のために戦い、命を落としていった人々。
この「国のため」ってのが一つのネックで、例えば明治維新に貢献した坂本龍馬、吉田松陰、高杉晋作、中岡慎太郎らは祀られてるけど、旧幕府側にあった新撰組は、誰一人祀られてない。
明治時代の著名な軍人、乃木希典や東郷平八郎も、戦争で亡くなったわけじゃないから祀られてない。
そういった細かい規定もある。

さて、この靖国神社は「国の為にに斃れていった英霊を祀る」から、当然、太平洋戦争の戦没者、213万余りの霊も祀られてる。
現在の平和に感謝し、その礎となった多くの人々を祈りを捧げるため、毎年多くの人が靖国神社を訪れる。
これはとてもいい。問題になるどころか、この国に生きる人間として当然のことだとも思う。

では、靖国問題と言われるものは、一体何なのか。
それは大きく分けて2つ。
一つは、政府要人が参拝することによって、憲法に定められた政教分離に反する恐れがあること。
靖国神社は神社、神道だから、国が公式にここに参拝するのはおかしいと。
そしてもう一つは、これが大きいのだけれど、A級戦犯の合祀問題。
つまり、日本を戦争に導いた張本人とされる軍人が祀ってある神社に、政府が参拝するということは、彼らを崇拝し、さらには先の戦争そのものを正当化する行為ではないかと。
大きくわけてこの2点。

どちらもとても重要な問題だけど、今日は対中国問題で靖国論だから、政教分離問題はスルー。
これは基本的に日本国内での問題だから。あと、紙面の都合もあるけど。
今日はこのA級戦犯の合祀問題についてのみ。
◆     ◆

そもそもA級戦犯って何?
具体的に言うと、終戦後、戦勝国主導で行われた極東国際軍事裁判(東京裁判)によって戦争犯罪人とされた人々のことで、28名が起訴。
7人が絞首刑にされ、16名が終身刑を言い渡されたのね。
で、死刑になった7名や、病死、獄死した7名、計14名が靖国神社に他の英霊と一緒に祀られてるの。
この14名のことでずっとモメてる。

とりあえず根深い、だからずっと議論されるんだけど、ゆっくり紐解いてみようかと。
まず、日本側の見解。
戦前、戦中に行った日本の軍事行為は「侵略」「植民地支配」である。
うん、そうね。残念だけど、そう言わざるを得ない。
これは村山政権下の閣議決定で出された政府の公式見解。いわいる村山談話。
小泉さんも、今の安倍さんもこの見解を踏襲してる。
こうして、私が悪かった、すまないことをしたと公式に発表することで、侵略を受けた当事者である中国との関係は比較的良好だった。

ところが、小泉さんが総理になった際の公約は「8月15日靖国神社公式参拝」。
これに中国が怒った。もちろんこの時が始めてじゃないけど。

「靖国神社には、我々の国を侵略したやつらが祀ってある。そんなとこへ参拝するとは何事か!先の戦争は間違っていたという謝罪は嘘だったのか!」という具合。

小泉さんは、当然と言われればそれまでだけど、強い愛国心の人。
戦争に関連した資料館を視察して涙を流したりできる人だし。
愛読書は「ああ、同期の桜」(海軍飛行予備学生第14期会編)でしょ。
さらに、尊敬する人物は吉田松陰。
松陰といえば、幕末の混迷期に、のちの明治維新の立役者となる人物を輩出した松下村塾の主宰者で教育者。
教え子に、木戸孝允・高杉晋作・伊藤博文・山県有朋、そして時を経て小泉純一郎。
安政の大獄で幕府によって捕らえられて、僅か29歳で斬首されたけど、辞世の句がすごい。
身はたとひ 武蔵の野辺に朽ちぬとも 留め置かまし大和魂

オレはここで死ぬが、国を想い憂う魂だけはここに置いていこう、か。
つまり、小泉さんの中にもそういう思想が流れている。総理大臣として当然かもしれないけれど。
で、そんな小泉さんだから、国を想い、守るために散っていった220万もの英霊に対しては、最大限の哀悼の意と感謝を捧げたかったんだろうね。
それが8月15日、靖国神社公式参拝っていう形の公約に現れてる。
一国の首相としては、まさに大きな選択だったと思う。
政教分離の議論や、当然、中国と始めとする侵略を受けた各国からの強い反発は目に見えてるけれど、それでも、人間として、国を愛する一人の男として、松陰の掲げた大和魂を残したかった。
で、最後の最後、公約通り8月15日の靖国参拝を実現させた。
僕個人としては、小泉さんの15日参拝はとても嬉しかった。ああ、この人は本当に日本を愛してくれてる人なんだ、って。
でも、僕がもし中国人だったら、きっと怒ってると思う。
とりあえずざっとこれが、日本側の立場。

中国はこれと正反対。
先の大戦を過ちだったとする以上、その首謀者が祀ってある神社に参拝することは絶対に許せないと。
具体的に言うと東京裁判で絞首刑になった14名のことね。

その怒りを交わすために、三木武夫元首相は「首相としてではなく、個人としての参拝」という発言をしちゃった。
これがまた議論になった。一つは、私人として参拝すると言い切ってしまったために、それまで隔年で参拝されていた昭和天皇が、それ以後参拝できなくなってしまったこと。
天皇は日本国民の統合の象徴である極めつけの公である以上、「私」って概念はないから。
でもこれはちょっとはっきりしない。

三木元首相の参拝がこの年の8月15日。1975年ね。
昭和天皇が最後に参拝されたのが、この3ヵ月後の11月21日。
つまり三木元首相の「私人参拝発言」の直後に天皇が参拝されているから、私人発言が以後の参拝取りやめの直接の原因になったとはちょっと考えにくい。

一旦、この問題は置いておいて、ほどなくして、大事件が起こったのね。
実は、終戦後ずーっとA級戦犯は靖国神社に祀られてなかったの。
それが終戦後33年経って、つまり1978年になって靖国神社側が突如、A級戦犯を合祀した。
つまり、靖国問題ってのは、終戦から33年の間は、それなりの議論はされてきたけれど、1978年のA級戦犯合祀をきっかけに表面化してきたとも言える。

実際、それまでにも中国側はちらほらと政府の参拝に対して難色を示してはいたけど、今ほど顕著ではなかった。
さらには、最近ニュースで大きく取り上げられたように、先日見つかったメモによると天皇もA級戦犯の合祀に不快感を示されていたよう。
「私は、或る時に、A級戦犯が合祀され、その上、松岡、白取までもが。
~中略~私はあれ以来参拝をしていない。それが私の心だ」と。
メモの信憑性は未だ議論のさなかだけど、天皇が参拝されなくなった要因はここにあるといっていいんじゃないかな。

とにかく、78年のA級戦犯の合祀後、ほどなくして態度を硬化させた中国。
事あるごとに日本の靖国参拝に非難を浴びせてくる。
裏には政治的理由や、外交カードとしての一面もはらんでいるはずだけど、事実、ここまで態度を硬化してくると日本としても放っておくわけにいかない。

そこで噴出した議論が「A級戦犯分祀論」。
つまり、中国の批判をかわすために、靖国神社に祀られている戦争犯罪人、A級戦犯14人だけ、別の場所に移動させようというもの。
そうすれば、中国を侵略した首謀者を参拝せずに、純粋に国のために斃れていった人だけを参拝できるから。
これに案に対して、靖国神社側は猛反対。当たり前といえば当たり前。
靖国神社の言い分は次の通り。

「本来、教義・経典を持たない神道では、信仰上の神霊観念として諸説ありますが、昔より、御分霊をいただいて別の神社にお祀りすることはあります。しかし、たとえ分霊されても、元の神霊も分霊した神霊も、夫々全神格を有しています。
靖国神社は二百四十六万六千余の神霊をお祀り申し上げておりますが、その中から一つの神霊を分霊したとしても元の神霊は存在しています。
このような神霊観念は、日本人の伝統信仰に基づくものであって、仏式においても、本家・分家の仏壇に祀る位牌と、遺骨の納められている墓での供養があることでもご理解願えると存じます。
神道における合祀祭はもっとも重儀な神事であり、一旦お祀り申し上げた個々の神霊の全神格をお還しすることはありえません。」

簡単に言い換えるとつまり、分祀ってのは神様の御霊を別の場所にも同じように祀ることですよ。お墓と仏壇があるように。
だから260万の英霊の御霊の中から、東条英機大将ら14名の魂だけ抜き出して別の場所に移すなどできませんよ、と。
分祀をするってことは、東条大将らA級戦犯14名(靖国側は昭和殉教者と呼んでいる)御霊もくっついていきますよ、という見解ですね。
それもそのはず。
A級戦犯14人と合祀したってことは、靖国神社としては、彼らも「国のために斃れていった英霊」であり、戦争犯罪人ではないって見解だもの。

とにかくまあ、靖国側が分祀なんて出来ないと主張するのは当たり前だと思います、僕も。
仮に政府が非宗教法人の国立追悼施設の建設を行って、靖国神社や、戦没者のご遺族、さらには国民の同意が得られたと仮定しても、さあ、引越ししてくださいと言ったところで、14名の霊が、はい、わかりましたといって引越ししてくれるはずもない。
この分祀論ってのは、亡くなった人の魂を、後世の人間の一方的な都合で整理しようっていう、ちょっと信じられない考えなんじゃないかな。

あまり表には出てこないけど、中国が靖国問題に強い懸念と反発を示すようになったのは、某新聞社の報道によるところが大きいとも言われてる。
現に、78年の合祀以後も大平、鈴木、中曽根元首相が合わせて20回の靖国参拝を行っているけど、中国も韓国も大きく注目した様子がない。
けれど85年(昭和60年)、中曽根元首相が戦後政治の総決算として公式参拝を表明するや否や、某マスコミが痛烈に批判を始め、同時に中国、韓国などの反発が予想されると一大キャンペーンを張った。
そのせいだ、とは僕には言い切れないけど、8月10日付けで中国人民日報が「不快感」を表明、ついには8月14日、中国が公式に参拝の反対を表明。
つまり、対中国を交えた靖国問題というのは、85年の中曽根参拝が機だと言っていい。

それまで中国は靖国神社のことなど知らなかった、だからそれをわざわざ教え、火をつけた某新聞社が悪い。
逆にの立場に立てば、日本が中国を侵略したのは歴然たる事実だから、戦後40年経って、中国が靖国神社を知り非難を浴びせてきたのは当然だ、むしろ遅すぎたぐらいだと。
前者の方は、言論の自由の上に成り立っているし、後者の方は、中国の国民感情を憂慮し、さらには外交を有利に運ぶ中国政府の立場から言えば当然かもしれない。

政教分離とA級戦犯の合祀問題。
中国が怒るから参拝はやめなさい。いや、中国の批判は日本に対する内政干渉だ。
分祀など神道の教義上、不可能だ、それは宗教弾圧でしかない。
とにかく、「慰霊」「追悼」といった行為が宗教的観念であり、無宗教での「慰霊」や「追悼」は不可能だ。
そもそも、参拝する、しない、分祀する、しないを論じること自体、政府が特定の宗教法人に介入することであり、政教分離に反する、など、様々な議論が行われてきてる。

とにかくとてつもなく根深い。
たまに、首相の靖国参拝が民事裁判に上がってくるけど、裁判所も基本的には、この問題への明確な言及は避ける。
違憲の可能性がありますよ、という含みは持たせながらではあるけれど。
で、昨年の9月、大阪高裁で明確な違憲判決が出た。
「総理大臣の職務としてなされたものと認めるのが相当」と。
小泉さんとしてはさぞかし悔しかったんじゃないかな。
国のため、私たちを守るために斃れていった人たちを、国の代表として心を込めて堂々と参拝して、それで憲法違反なんだもの。
現総理の安倍さんは賢いというかずるいというか、靖国に行く、行かないとは明確に言及してない。
実際行ってるけれど、朝の早い時間にささっと参拝を済ませちゃう。
中国・韓国に対して微妙な立場を堅持しつつ、戦没者の遺族に対しても微妙な立場を見せてる。
もちろん、一個人として靖国に参拝するのは何ら問題はないけれど、やっぱり総理大臣ともなると、そうもいかない。
各方面にそれぞれ配慮しなきゃならないから。
その点、中国の反発を正面から受けてでも、8月15日参拝を強行した小泉さんは、信念を貫いた点で、僕はとっても誇りに思う。
(後の安倍さんはちょっとかわいそうだけど)
まあ、それならば就任後、すぐに実行し、5年間とも8月15日参拝を実現して欲しかったなとも思うけれど。

僕は今年、8月15日に靖国神社を参拝してきました。
そこで強く感じたのは、A級戦犯や政教分離といった政治的問題を解決するのは難しいけれど、決して妥協せず諦めず、信念を持って取り組んで欲しいと。
大平元首相の言葉を借りれば、大東亜戦争やA級戦犯への判断は、いずれ歴史がいたすであろう、と。
いい言葉だけれど、だからといって今を生きる私たちは何もせず、何も考えず、中国や韓国の顔色だけを伺うのではあまりに悲しい。
靖国問題を論じる上で何よりも大切なことは、靖国神社という場所には、日本の神話と伝統に生きる神様が祀られているのではなく、私たちを愛し、私たちを守ろうとして斃れていった260万の英霊が祀られているという事実。
僕たちの血の一部は、彼らの涙、叫び、想いで出来ているんだもの。

志半ばで戦場に散っていった人々の想いをしっかりと受け止め、受け継ぎ、目を背けることなくしっかりと靖国問題に向き合うこと、考えること、そして生きること。
それが、今を生きる僕らに与えられた使命なんじゃないかな。
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